映画『FAKE』を観た
「誰にも言わないでください、衝撃のラスト12分間。」
オウム真理教信者を追った『A』『A2』を手掛けた森達也さんの最新作『FAKE』は、2014年に世間を賑わせた、新垣亘さんを“ゴーストライター”としていたという、佐村河内守氏を被写体にしたドキュメンタリー映画。
実は私、森さんがこの映画を撮り始める前に、彼の講義を受けていて。映像は思考停止させるとか、客観中立なんてないということを、様々なドキュメンタリーを通じて学びました。
映像はもうできない、やらないと言っていた彼の久しぶりの映像作品ということで、大変楽しみにしていました。
講義を通じて彼には散々騙されて(?)きたので、相当疑心暗鬼になって観てしまいました。でもこれは、もっと素直な気持ちで観ても良かったのかもしれない。
別にラスト12分間を知ったからといって、この映画はつまらなくなりません!
映画内では“悪役”的な立ち位置の神山さん。彼はこの映画にジャーナリズムを感じられないだのなんだの言ってるけど、そりゃそうです、これ、そういう映画じゃないですよ。と言いたくなった。
で、実は彼、出演を断っていて、映画内では「多忙などを理由に」ってなってるんですが。
「(傷つけた)少女たちに直接謝罪しない限り応じられない」というのが理由だったようです。ちなみにこの少女たちの話は本編でも全く触れられていない。
『A』や『A2』でもオウム被害者のことや事件のことは全然取り扱っていなかったことからもわかるように、これが森さんのやり方。というかドキュメンタリーなんて全部そうだ。別に嘘をついているわけではない。見せたい部分・見せたくない部分をいくらでも選べる。だから客観中立なんてありえない。
佐村河内氏が本当に嘘をついていたのかどうか?本当は新垣氏が嘘つきで“悪者”なのか?映画を観てもその答えはありません。ただ、メディアは分かりやすい二元化が好きなのだ、そして私たちはそれを思考停止して受け入れすぎてる、ということ。
だからこれは、佐村河内氏と新垣氏に限った話ではなくて、何にでも当てはまる。
どんなふうにまとめたらいいか分からない。というか、「分からない」というのが一つの答えかもしれない。
ただ、私は、譜面が読めない・書けないプロの作曲家が少なくない数、存在することを知ってる。そして、やっぱりちょっと変わってて、時にはコミカルに映っている佐村河内氏は、ある意味とても作曲家、芸術家らしいなと。
このインタビュー…いや、ドキュメンタリーも、非常に面白かったです。ちょっとニヤニヤしてしまった。