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音楽について考えていることやライブレポートを書きます

『勝手にふるえてろ』と『A子さんの恋人』 二人の男の間で揺れた先にあるもの

 明日から旅行へ行くのに、やらねばならぬ原稿へのやる気が出ない。ということでブログを更新してみます。

 

勝手にふるえてろ

 

先日、松岡茉優ちゃんの初主演映画『勝手にふるえてろ』を鑑賞してきました。

松岡さんは『ちはやふる』の微妙すぎる京都弁+ハロプロオタク、というイメージで。女優としての実力はどうなんだろう?と思っていたのですが、いざ映画を見たらめちゃめちゃ好きになってしまった。

ものすごく雑に言うと、26年間彼氏がいない、処女のヨシカが脳内彼氏(?)の「イチ」と、同僚でなんだか暑苦しく迫ってくる「ニ」で揺れると言うストーリー。

「イチ」が実在するか否かはさておき、こういうこと考えている人は結構多いんじゃないかと思う。

非現実的な「イチ」に恋焦がれつつ、迫り来る「ニ」という現実。ここで「ニ」を選べるかどうかが結婚できるかできないかに関わってくるのでは。

「ニ」が渡辺大知というキャスティングもセンス爆発してる。

ヒゲや眉毛が濃くて唇が分厚くて、塩顔とは程遠い。正直私は苦手。

ヨシカも最初(というか物語中ほぼずっと?)は彼に嫌悪感丸出しにしていて、「わかる、わかる」と思っていたんだけど、最後にヨシカの部屋に来て「好きになっちゃったんだもん!」と犬みたいにキャンキャン言っている彼を見たらなんだか愛おしく思えてきてしまった(上目遣いのカメラアングルもまた素晴らしい)。

映画の「イチ」はヨシカの名前を覚えていません、私の世界にあなたはいません、とはっきり言ってくれたから踏ん切りがついたんだろうけど、私たちの「イチ」はどうなんだろう?

例えばそれが二次元のキャラクターだったり、およそ手の届かない俳優だったり、アーティストだったりしたら?

「誰だっけ?」といわれる機会もないままに、私たちはほんの少しの思い出を大事に、残りの人生を生きてしまうのかもしれない。現実の「ニ」を拒否しながら。

26歳で気付けたヨシカが少し羨ましくなるね。

 

 『A子さんの恋人』

 

二人の男で揺れる話、でもう一つ。

『A子さんの恋人』(既刊4巻)を読んでいて、とても複雑な気持ちになった。

こちらもまた地味なえいこさんが主人公。30歳、美大卒、漫画家。

NYに住んでいた時にAくんにプロポーズされるも、「考える」と言って半年経ち、帰国して返事はまだしていない。

日本に帰ってきて元彼のA太郎にちょくちょく迫られる。なんだかはっきりしない。

それを見守るけいこさん(卒業以来彼氏いない、バリキャリ)、ゆうこさん(常に頭の悪い彼氏がいる、適当)、的な話なのですが。

多分みんなちょっとずつ誰かしらの要素を持っていて、それって端から見たらこんな感じなんですよ、と突きつけられているよう。

「痛いな」とか「嫌だな」とか思っても、「あれ? これって私じゃん」と気づかされる。

私ははっきりしない、考える、と言って考えないでウダウダ毎日を過ごしているところはえいこさん、仕事も頑張ってるし見た目も気をつけてるけど彼氏ができない(のに結婚について真剣に考えたりしてる)ところはとてもけいこさんだと思う。

ひとつひとつのセリフや所作、シチュエーション、食べ物……どれもさりげなく意味があって、深読みしたくなる。

 

 

二人の男で揺れる、というのは少女漫画では王道の設定。王道のヒロインは元々可愛い(or可愛くなっていくシンデレラストーリー)、明るい(or飛び抜けて優しい、男勝り)、そして二人の男はシンメトリーのように異なる魅力を持ったイケメンだった。

でもこの二作品で描かれているのはもっともっと現実的で、ロマンスなんて一つもない。そもそも主人公は「喪女」っぽさがあるし、キラキラしたお目目の可愛らしい女の子なんかじゃない(いや、松岡茉優はかわいいけどさ)。

主人公の行動や言葉がグサグサと刺さって、観たり読んだりしたあとに残るのは胸キュンや爽快感ではなく、しんどい気持ちだけだ。

えいこさんはどんな選択をするんだろう?

ヨシカのように「ニ」と向き合うのが幸せなんだろうか?

正解はないけど、色々と考えてしまうね。